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●シーカヤックツアー『知床エクスペディション』に参加して(1999.8.17〜8.22)
<8月17日>
女満別空港12:10着。到着ロビーでガイドの新谷さんと助手の新井場君に声をかけられた。曰く「すぐわかった。」との事、なんとなくうれしい。途中、Aコープでツアーの食料を大量に買い込んで、羅臼の島船長宅に16時頃到着した。今回のツアー参加者は11人(うち初心者3名、なぜか医療関係者が多い)で、新谷さん達を入れて総勢13人をシングル艇5杯、ダブル艇4杯に分乗する事になった。自分は普段から乗りなれているシングル艇のパフィンに乗れることになる。その後簡単なブリーフィングを受け、個人装備をパッキングしたり、カヤックをトレーラーに積んだりした後、ジンギスカンの夕食となった。新谷さんの冒険談を聴き、22時頃就寝。
知床半島:主峰・羅臼岳から伸びる半島は、海岸線は断崖絶壁が続き、岬まで行く歩道すら無い。山にはヒグマ、シカ、キタキツネなどが生息し、日本に残された最後の秘境と言える。
新谷暁生:南米最南端のホーン岬をシーカヤックで回航し、「ケープ・ホナー」の称号を持つシーカヤックガイドの第一人者。一言で言えば頼り甲斐のあるオヤジ。
新井場(アライバ)君:新谷さんの根城、ロッジ「ウッドペッカーズ」の居候。しかしこんなに良く働く居候は見たことが無い。
島船長:羅臼生粋の漁師、不測の事態が発生した時のサポート(救助)役
<8月18日>
5:00起床、岬に向かう道路の終点である相泊まで移動し、漁港より出航の準備をする。食料・テントといった共同装備と、着替え・寝袋といった個人装備を積み込み、準備が整ったのが8:30頃。かなりの強風が吹き荒れているが、思いきって出航する。しかし港の堤防を越えた途端に強風にさらされ、わずか200m漕いで上陸する。風がおさまるまで停滞することとなり、最終日にカヤックを回収しやすくするために車をウトロ側に回したり、相泊温泉に入ったりして時間をつぶす。
はるかかなたに国後島が見えるが、海に囲まれた日本で国境が見えるのはここだけではないだろうか。16時頃、新谷さんの予言どおり夕凪となり、わずか3km程ではあるが前進し、観音岩手前でキャンプを張る。日没まで時間が無く、夕食はごはんにさんまの蒲焼を乗せただけのシンプルなものとなった。しかもゴロタ石の浜でのキャンプはとても快適とは言えない。
人間の頭大の石がゴロゴロする浜でキャンプをする→
<8月19日>
4:00起床、5:30出発、観音岩を越え、ペキンノ鼻を目指す。7:30頃着き、ペキンノ鼻の神社にて航海の安全を祈願する。はるかかなたに岬が遠望できるが、どうも海は荒れている模様だ。その後風が強まり、8:20に二本滝に上陸し、前日同様風待ちとなった。まだ全行程70kmのうち15km程しか進んでおらず、この日も停滞すると日程的にきつくなってくる。
風呂代わりに滝壺で水浴びをする→
気温は30℃近いが滝の水は冷たく、水浴びをしたり、昼寝をして過ごす。海岸を歩いていると、海上保安庁が投下した遭難信号発信ブイが漂着しているのを見つけた。返却して保安庁に恩を売っておくのも良かろうと、カヤックに積んで行くことにする。
夕凪を期待して、16時に夕食のカレーを食べた後、凪とは言えないが多少風が収まってきたので、17:00に出発する。波も高く、風も強く、カヤックは木の葉同然に翻弄される。狭い岩礁帯(赤岩)を抜ける時、ダブル艇が沈しそうになるが、新谷さんの「漕げー!」という怒号によりなんとか全艇通過した。この頃になるとスターンラダー、ローブレイスといった転覆を防ぐテクニックも自然と出るようになった。ともかく岬まであと2kmという所まで前進し、熊におびえながらのキャンプとなる。水場には熊の足跡があり、「ワンワン」と吠えたり、音を鳴らしたりして人間の存在をアピールする。岬の灯台の灯りもすぐそこだ。
<8月20日>
4:00起床、今までにない強風が吹き荒れている。波も高い。そこで最後の手段、浅瀬をポーテージ(引きずる)して岬に向かうこととなる。私のカヌー「パフィン」はポリエチレン製なので、少々岩の上を引きずっても平気だが、ダブル艇のシースケープはFRP製のうえに装備を満載しているので、重いのなんの・・ローソク岩付近では立っているのも辛い程の風となる。
強風の中、カヌーを引きずりながら進む→
岬の先端に達したときは、その地の果ての様な雰囲気と疲労により、背筋が寒くなる。ところが岬を越えたとたんに風は止み、海は凪ぎ、まるで別世界となった。皆、鼻歌交じりとなり、今回のツアーで初めて快適に漕ぐことができた。
通称「落合湾」に上陸し、ラーメンを食べ、エネルギーを充填する。
更に今日のキャンプ予定地「蛸岩」を目指す。そこはルシャの手前で、雲行きから判断して、「ルシャおろし」という強風が吹いているのは確実なので、その手前でキャンプしようという新谷さんの判断だった。
ところが蛸岩の手前「カシュニの滝」でものすごい突風に遭遇した。おそらく風速は30m程度あったのではないかと思われる。先頭の新谷さんは突き進んで行くが、次々と強風に押し戻され、自分も岩壁に張り付けられそうになるが、必死のパドリングで突破できたのはシングル艇では自分のみ、他にダブル艇が2杯だけであった。
強風のため、骨組みだけのテントで寝る→
押し戻された人達は転覆した艇を一時放棄し、海岸沿いを歩いたり泳いだりしてキャンプ地に向かった。スパゲティをかきこみ、この日は酒を飲む元気も無く、テントも強風のため張れず、星空の下で寝た。
<8月21日>
新谷さんと新井場君は3:30に起きて前日に放棄した艇の回収に行く。なんとダブル艇の後ろに四隻を数珠繋ぎにして引っ張って来た。恐るべきパワー!向かい風の中5:30に出発し、海岸線ギリギリを通ることにより風(ルシャおろし)を避け、なんとかルシャを通過する。そこで自分達とは逆方向に進むツアーに出会ったが、4日目の自分達はすでにベテランであり、そのおぼつかないパドリングに前途を心配した。その後またしても向かい風が強くなり、最終日にゴールのウトロまで行ける見込みが立ったこともあり、無理せず岩尾別の手前に上陸する。そこは背面が岩壁で熊の出没の心配も無く、岩清水もあり、絶好のキャンプ地であった。それまで秘蔵していたビールを冷やして乾杯し、世界一うまいと絶賛しあった。昼はそば、夜は食料大放出のカレーとなった。またオホーツク海に沈む夕日も最高で、週明けから社会復帰できるか心配になってきた。
半島内の入江に上陸する
ツアー参加者集合写真・バックは知床半島灯台
<8月22日>
5:30出発、風も無く、鏡面のような水面をスイスイと進んで行く。途中、洞窟に寄ったりしながらも岩尾別を過ぎ、予定通りウトロが見えてきた。5日ぶりに人工建造物を目の当たりにし、次第に現実に引き戻されて行く。港内を慎重に進み、スロープから上陸する。今までに催行してきた知床ツアーの中でも、最も難易度の高いツアーだったと新谷さんは言った。新谷さんの勇気と判断力と、ムードメーカー新井場君の下働きと、ツアー参加者全員のチームワークにより、無事に知床ツアーを終えることができた事を感謝したい。自分も少し大きくなった気がする。
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